臨床心理学系大学院(院試)に合格したときのコツ

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 目次

 

臨床心理系大学院の試験(院試)に合格するにはどうすればよいか

 

2020年現在、公認心理師という心理職の国家資格が生まれました。

 

公認心理師は、学部から心理学部ではないと取得できないものの、基本的に大学院に行く必要があるため、臨床心理士の資格と同様に、院試を受けなければなりません。

 

つまり、心理職を目指す方々にとっては、院試を合格することが求められます。

 

そこで、臨床心理系の院試を合格するのにどのように勉強したら効率的なのかについて私の立場からお伝えしたいと思います。

 


私の立場:2つの大学院に合格

私は、学部は心理学部で、外部の大学院を2つ受験し合格しました。

 

なぜ外部の大学院を受けたかというと、大学院で研究したいテーマがあったため、そのテーマに関連した教員がいる大学院を受験しました。

 

今回は、その立場から述べていきます。

 

 

学習方略を大切にする

 

まず何よりも院試(何事の勉強も!)にあたっては、学習方略(learning strategy)を意識することが大切です。

 

なぜなら、なるべく少ない努力(時間)で目的を達成するために必要になるからです。

 

学習方略を意識しないと、どれだけ時間をかけて勉強してもなかなか成果がでません。

 

そのため、なるべく早いうちから学習方略を意識しておきます。


学習方略については、のちほど別の記事で詳しくまとめます。

 

ここでは、簡単に重要なポイントを抑えます。

 

 

目的(ゴール)・時間を決めて、優先順位をつける=全体像を把握する

 勉強のスケジュールの全体像を地図として持っておくことが大切です。

 

その地図を持つことで、「自分はいまどこにいるのか」「これからどこに行けばいいのか」がわかるようになります。

 

逆に地図を持たずに、とりあえず闇雲に勉強を始めてしまうと、やるべきことがわからなくなり、成果よりも徒労感が残ることになるでしょう。

 

全体像という地図を手に入れるために、やるべきことは、目的(ゴール)・時間を決めて、優先順位をつけることです。

 

この勉強の目的(ゴール)は何なのか。多くの場合、院試に合格することです。まず何よりも、それを意識することで無駄な勉強をせずにすみます。

 

次に、その目的を達成するために残された時間はあとどのくらいあるのか? その時間から、いつまでに何をやればいいか逆算して考えて、全体的なスケジュールを決めます。

 

そのときに、院試に合格するという目的に対して重要な勉強とあまり重要じゃない勉強があるので、やるべきことの優先順位をつけます。

 

重要な勉強から先にやると、目的に対して効率的に時間が使えます。

 

 

自己調整学習を意識する

学習方略として、自己調整学習(self-regulated learning)の基本を抑えます。

 

教育心理学では、よい学び手のモデルとして自己調整学習が提唱されています。

 

調べれば出てくるので、詳しく述べませんが、

①事前に計画立てて

メタ認知を働かせながら勉強し

③振り返りを行う

これらを繰り返します。

 

これを意識することで、効果的に学習することができます。

 

以下のサイトがわかりやすいです。

https://hondamadai.com/psychology/srl/#:~:text=%E8%87%AA%E5%B7%B1%E8%AA%BF%E6%95%B4%E5%AD%A6%E7%BF%92%E3%81%A8%E3%81%AF,%E5%AD%A6%E5%8A%9B%E3%81%A8%E3%81%84%E3%81%86%E9%A0%85%E7%9B%AE%E3%81%8C%E3%81%82%E3%82%8A%E3%81%BE%E3%81%99%E3%80%82

 

 

拡張的知能観を身につける

拡張的知能観も身につけます。

 

これも教育心理学の概念で、調べると出てくるので、詳しく説明しませんが、簡単にいうと「やればできる」の感覚です。

 

難しい問題に出会ったときに、「自分はやっぱり頭が悪いんだ」と自動的に思うのではなく、「逆に難しい問題に出会って、これからどんどん成長できるぞ」と自分のこれからの成長を楽しめるようになるということです。

 

このマインドセットは、すごく重要ですので、調べてみてください。

 

以下は、教育心理学者で拡張的知能感の提唱者であるキャロル・ドウェックのスピーチです。

https://www.ted.com/talks/carol_dweck_the_power_of_believing_that_you_can_improve?language=ja

 

 

テスト効果・分散学習・関連づけを取り入れる

 記憶の定着に対して効果的に学習を行うために、学習心理学では様々な技法が提唱されていますが、ここでは、

①テスト効果・・・再認よりも再生(検索)。つまり、テストを受けたときのように頑張って思い出そうとすること

②分散学習・・・一夜漬けで集中的にやるのではなく時間をかけて分散的に学習すること

③関連づけ・・・新しい知識を既に持っている知識と結びつけて理解しようとすること

を意識します。

 

これも調べると出てくるので、詳しく述べませんが、以下のサイトがわかりやすいです。

https://yuchrszk.blogspot.com/2014/06/blog-post_30.html

 

 

一般的な院試の勉強方法

 

基本的に、過去問を解きつつ、わからないところがあったら補足的に学んでいくというのが私が効率がよいと思う方法です。

 

つまり、主従関係でいうと、過去問や過去問に基づいた出そうな問題が主で、各知識が従です。

 

これを踏まえたうえで、以下では、一般的な院試の勉強方法のステップについて述べます。

 

 

1.受けたい大学院の過去問・教員を確認する

 まずは、余計な勉強をしないために、最初に受けたい大学院の過去問と教員を確認します。

 

過去問を確認することによって勉強する必要がある範囲がわかります。

 

また、問題を作成するのは、その研究科に所属している教員なので、各教員の専門領域を把握することによっても 勉強する範囲がわかります。

 

受けたい大学院によって問題の出題傾向は異なりますが、一般的にいって心理学の専門分野の領域と英語の領域の2つがセットで出題されることが多いと思うので、以下ではそれらについて説明していきます。

 

 

2.専門分野の基礎を学ぶ

心理学の専門分野のセクションでは、出題形式として

①語句説明・・・専門用語について200字などで説明する問題

②論述・・・心理学の問いや事例に対してやや長めの800字などで論述する問題

があります。

 

①は、以下の本が参考になります。

公認心理師・臨床心理士大学院対策 鉄則10&キーワード100 心理学編 (KS専門書)

公認心理師・臨床心理士大学院対策 鉄則10&キーワード100 心理学編 (KS専門書)

  • 作者:宮川 純
  • 発売日: 2018/07/22
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
 

 

②は、以下の本が参考になります。

公認心理師・臨床心理士大学院対策 鉄則10&過去問30 院試実戦編 (KS専門書)

公認心理師・臨床心理士大学院対策 鉄則10&過去問30 院試実戦編 (KS専門書)

  • 作者:坂井 剛
  • 発売日: 2018/07/22
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
 

 

適宜足りない知識は、追加で補います。

 

 

3.英語を学ぶ

英語のセクションでは、出題形式として英語の論文や本の一部

が出ます。

 

和訳や英訳など形式はさまざまですが、共通して抑えるべきことは、

①基本的な英語を読めるようになる

②心理学の専門用語を英語で知る

③背景となる心理学的知識を知る

です。

 

①は、大学受験用の参考書などで勉強します。

 

②は、以下の本が参考になります。

心理院単

心理院単

 

 

③は、専門領域のセクションで勉強したように、過去問や教員の出題傾向を見て、心理学的な背景知識を深めていきます。

 

また、院試のためにも、卒論のためにも英語論文を読んでいくのもよいと思います。

 

 

4.その他、院試をイメージするのに参考になるサイト

その他、私が院試を受けた際に参考になったサイトをいくつか紹介します。 

 

http://shinrinyushi.blog.fc2.com/blog-entry-28.html

 

https://www.kals.jp/kouza/shinri/pdf/fair16-b.pdf

 

http://rinsyousinrisi.blog.fc2.com/blog-category-2.html

 

 

具体的な勉強プラン

 

以上を踏まえて、具体的な勉強プランを仮に考えました。

 

目的:入りたい大学院の試験の合格

期間:約6ヶ月(×1日約1~2時間=合計約300時間)

想定している人:一通りの心理学の概論を学んだ学部3年生

 

 

1.過去問をできるだけ多く手に入れ、教員のテーマを知る(約半月)

目標とする大学院の過去問をできるだけ多く手に入れます。

 

ホームページに過去問が載っていたり、郵送してもらったり、自ら直接大学に出向き手に入れたりする方法があります。

 

大学によって過去問の入手方法は異なりますので、労力をかけてでも最初に過去問を手に入れます。

 

次に、教員のテーマを知ることが大切です。

 

こちらもホームページに書いてあることが多いです。見ましょう。

 

また、教員の著作物も確認しておきましょう。

 

CiNiiなどでも論文のタイトル・領域を確認します。

 

また、情報収集にあたっては、オープンキャンパスや説明会を活用し、院生に直接話を聞くのも有効だと思います(勉強の範囲だけでなく、入学後の生活や臨床の学派などを知るにあたっても)。

 

ツイッターなどでも心理の院生のアカウントがありますので、心理系アカウントを作り、受験生同士で情報の共有や院生に直接SNS上で尋ねることも有効な戦略だと思います。

 

 

2.過去問を解きつつ、自分の抜けている知識を知る(約半月)

過去問に向き合い、頑張って解こうとしてみます。

 

辛いかもしれませんが、自分の限界を知ることが大切です。

 

そこから、これはどうやったら、何を学んだら解けるのだろうか? などと疑問が生まれるかもしれません。

 

その疑問こそが、学習効果を高めます。

 

以上を踏まえて、たとえば、精神分析系が多めだな、発達系が多めだな、というように、出題範囲に仮説を立てます。

 

また、出題範囲に仮説を立てたら、自分の知識とのギャップを確認し、どうやったら漏れなくダブりなく、そのギャップを埋めるように勉強できるのか、全体的なスケジュールを自分で立てます。

 

このスケジュールは地図になります。

 

 

3.スケジュールに準拠しつつ勉強をする(約5ヶ月)

自分で立てたスケジュールをもとに、上記で挙げた基本書を参考にしつつ、勉強します。

 

基本書で補えない知識は、その他の本や論文で辞書的に補います。

 

学ぶ際には、上記で述べた学習方略を意識します。

 

つまり、読むだけ、書き写すだけではなく、思い出そうと努力すること、自分なりの理解をしようとすることなどです。

 

他にも効果的な学習方略はありますので、それらを使いながら勉強します。

 

また、モチベーションを高めるために、自己決定理論(self-determination theory)が参考になります。

 

自己決定理論では、自律性・有能感・関係性の欲求が大切だとされていますので、それらを満たすようにしましょう。

 

つまり、誰かにやらされているのではなく自分でやっているという感覚、問題が解けて前に進んでいる感覚、院試仲間や院生と関わりを持ち切磋琢磨する感覚です。

 

特に、院試は孤独になりやすいため、情報共有のためにも、モチベーションのためにも、院試仲間を大切にするとよいと思います。

 

 

4.その他、並行して研究計画書を書く

院試には研究計画書を求められることが多いと思います。

 

卒論で研究をしている方は、そのテーマに関連したもので書くと背景となる知識があるため書きやすいと思います。

 

しかし、外部受験だと、なぜこの大学院を受験したのかという理由付けが聞かれることがありますので、自分のしたい研究テーマと教員のテーマを関連づけて話すなど自分なりに考えます。

 

研究計画は、院試の勉強と同時に始め、なるべく早く形にしたら、院試仲間や院生にフィードバックをもらい、ブラッシュアップするようにします。

 

もし研究計画の立て方がまったくわからない場合、以下の本が参考になります。

 

 

結論

 

1.学習方略を大切にする!

 

2.過去問や教員のテーマをもとに出題傾向を知り、自分に足りない知識を埋める!

 

ファイト!

 

 

「セクシュアリティは自分を構成する要素の1つでしかない」ってちょっと暴力的かも

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セクシュアル・マイノリティに関する活動をしていたら、「セクシュアリティは、出身地や利き手、血液型などと同じように、自分を構成する要素の1つでしかない」のような発言を聞いたことがあるのではないでしょうか。

私は、それって”セクシュアリティに対するフラットな視点”を提供する一方で、人によっては少し暴力性を感じるのでは、と思います。

 

セクシュアル・マイノリティの人々は、社会の中で「自分はセクシュアル・マイノリティである」というアイデンティティを発達させていきます。

まだ十分に発達していない段階では「もしかして、自分ってセクシュアル・マイノリティっていわれるやつかもしれない。そうなると、偏見にさらされたりして、やばいんじゃ?」という脅威を感じますよね。

その段階では、自分のセクシュアリティをフラットにみて自分を構成する要素の1つとは思えません。

むしろ、自分の中でセクシュアリティは脅威的なものとして重要性が高まるのです(その脅威に耐えられない場合は、逆に軽視してしまうかもしれませんが)。

その人が「セクシュアリティは自分を構成する要素の1つでしかない」と聞いたとき、「いや、そんなことない!」と自分の認識とのギャップを感じるのではないでしょうか。

それって、その人にとっては感情的に辛い経験になりえますよね。

むしろ、「セクシュアリティって自分の中で大切な要素だよね」という発言を聞いた時の方が、共感的に安心します。

 

***

 

セクシュアリティは自分を構成する要素の1つでしかない」と誰が言っているか、誰が受け取るかによっても意味は変わってきます。

マジョリティの人たちが発すれば、それは、相手のセクシュアリティを過小評価するとして、小さな差別を意味する”マイクロアグレッション”になりえます。

一方で、当事者の方が発したのであれば、アイデンティティがやや発達している当事者にとっては、「もっとセクシュアリティをフラットにみてもいいんだ」とむしろ希望にさえ映るかもしれません。

でも、アイデンティティが未発達な人にとっては、その発言が、自分の気持ちと乖離していて、疎外感を味わう原因にもなりえます。

それは、ただでさえアイデンティティが未発達で脆弱かもしれない人にとっては、辛い中にさらに辛い体験をするという泣きっ面に蜂です。

 

発信者は受け手の解釈を強制することはできません。

だから、「セクシュアリティって大切だよね」と「セクシュアリティをそんなたいしたことないよね」という考えは、どっちか一方だけではなく、どっちも大切なのです。

つまり、どっちかの基準に偏ることなく、「セクシュアリティって大切だよね」と同時に「セクシュアリティってそんなたいしたことないよね」という2つの基準、すなわちダブルスタンダードを私たちは生きる必要があるのです。

セクマイコミュニティから離れたところでも活動しよう

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セクシュアル・マイノリティ(性的少数者;以下、セクマイ)は、連携することが大切とよく言われます。
LGBTという用語は、レズビアン・ゲイ・バイセクシュアル・トランスジェンダーというそれぞれ別々のコミュニティの人たちがセクマイの権利向上のために連帯して戦略的に作られたという話もあります。
たしかに、セクマイはマイノリティであるゆえに、人々と協力しみんなで声を上げて情報を発信していくことで、地位向上や偏見解消などをより目指しやすくなると思います。
また、連携したところのコミュニティには、社会的な地位の向上のためだけでなく、互いにサポートし合う機能もあります。
そのようなコミュニティに出会うことで、自分のセクシュアリティに戸惑い、居場所がないと感じている若い当事者の人は、豊富な情報が得られたり将来を見通すためのロールモデルを見つけやすくなったりと大いに救われますよね。
でも、若いセクマイ当事者へのサポートは、それだけで十分でしょうか?
 
ここで、たとえば、中学1年男子のAくんを考えてみます。
Aくんは「なんとなく同性に魅かれる・・・」と内面で感じながらも、それを明確に意識できていません。
なぜ明確に意識できていないのかというと、”異性を好きになるものだ”という前提の中で今まで生きてきて、その中で同性が好きと意識することは、Aくん自身の存在をとてつもなく脅かす体験だからです。
今まで自分は周りと同じ存在だと思っていたのが、同性が好きと意識することで、自分は変わり者であり、みんなに受け入れてもらえないんじゃないか、疎外されるんじゃないかという気持ちになります。
Aくんにとって、今まで生きてきた社会がすべてであって、世界にはいろいろな人がいるということを知りません。
だから、同性が好きと意識することでさえ、Aくんの主観的な体験ではものすごく大変なことなのです。
そのような仕組みの中で、Aくんは「なんとなく同性に魅かれる・・・」という気持ちを無意識的に防衛として意識しないようにしています。
 
 ***
 
さて、Aくんの存在を考えたとき、冒頭のアプローチで十分でしょうか?
十分ではないと私は思います。
Aくんは、セクマイコミュニティの存在も知りませんし、そもそもセクマイコミュニティにアクセスすること自体が自身の存在を脅かすのですから。
むしろセクマイコミュニティやそこで発信される情報を無意識的に避けることさえあるかもしれません。
だから、冒頭のアプローチでは、Aくんにアクセスすることが難しいのです。
でも、Aくん自身が同性が好きという気持ちを肯定できるようにするためには、Aくんに効果的にアクセスし、情報を伝えていく必要があります。
そこで、重要なのは、Aくんが興味を持っている対象・領域から、セクマイに肯定的な情報・態度が少しずつ発信されていくことだと思います。
たとえば、Aくんがyoutubeでゲーム実況を観ているとして、もしその動画からセクマイに肯定的な情報が発信されれば、ふとした瞬間にAくんは自分自身に向き合うことができます。
そのちょっとずつの積み重ねが、Aくんの同性が好きという気持ちを意識させることに繋がり、やっと自分のセクシュアリティについて戸惑う段階に導きます。
そうしてやっとセクマイコミュニティに繋がれる可能性が出てきます。
つまり、一気に向き合わされると脅かされるから、セクマイの情報を全面に押し出すことなく、セクマイとは関係ない文脈でふとした瞬間に少しずつが大切です。
 
だからこそ、Aくんにアクセスするために、私たちはセクマイコミュニティに留まりすぎず、セクマイに関係しないところでも活動の場を持つ必要があるのです。
ということで、セクマイコミュニティから離れたところでも活動しよう!